毛剃りした豚肉を目視で検品しながら水洗いします。
ひと口食べた時の、とろっとろのやわらかい食感はオドロキでした。肉自体はとてもさっぱりしているにもかかわらず、パサつき感がなくジューシーで、たれの風味が皮までしみこんでいて。家ではこううまくはなかなか作れんなぁと、2個目に箸を伸ばしながらしみじみ思う秋の食卓…。
『co・opやわらか豚角煮トンポーロー』、一度でも食べたことがある方ならば、冒頭の文章に大きく頷いていただけたことでしょう。もっとも、これだけ完成度の高い商品を作るにはそれなりの理由があるわけで、そのあたりを今回、工場でじっくりと観察させていただきました。
ニッポンハムが宮崎県日向市の工場で製造している豚角煮トンポーロー。製造の自動化がすすむ商品が多い中、工場内には大勢の人の姿が。「機械化がむずかしい作業が多いんですよ」と苦笑する担当者に促され、向かった最初の作業。何人もの人が皮つきの豚三枚肉(バラ肉)を前に黙々と作業しています。「製造は豚肉の毛を剃るところからはじまります」。この商品はゼラチンを含む皮つき三枚肉を使っているため、肉の皮に剃り残した毛がないよう、1枚1枚人の手で丹念に剃る作業が必須なのです。
処理を終えると、肉の臭み取りと下味つけのために、ねぎやしょうがなどの香味野菜を刻んだ調味液に漬け込み、同時にやわらかくなるようタンクの中で肉をマッサージ。ようやく下ごしらえが終わります。「この段階で肉を一旦ボイルして脂を落とし、1枚ずつにスライスしてたれでさらに煮込んでいくんです」。
圧力をかけて長時間煮込むことで、肉は驚くほどやわらかくジューシーに仕上がっていくのです。
こうばしい香りとともにアツアツの湯気を上げる、できたての豚角煮トンポーロー。ひとつつまみたくなる衝動に何度もかられる、食いしん坊にはたまらない取材でした。
コープ九州の生活情報誌クリム12年10月号より