卵、小麦粉、糖類をすべて加えて機械でミキシングした後、手でもしっかり混ぜて中の空気を抜きます。
工場に入った途端、今まさにカステラが焼き上がっているであろう、プーンと甘い匂い。お菓子の製造工場ならではの満足感に包まれたところで目に飛び込んできたのが巨大な割卵機。1時間で約4000個もの卵を自動で割るこのマシンからカステラのラインが始まります。
卵、小麦粉、砂糖、水あめ、はちみつ。長崎県雲仙市にある(有)和泉屋が手がける、身近な素材だけを使ったカステラは、20年以上にわたる生協のロングセラーです。
「卵は雲仙の農場で餌から管理した卵を中心に、長崎県産を使っています」
カステラは卵が命。色や味わいがおいしさの第一歩というわけで、鶏卵の生産からすでにカステラ作りは始まっているのです。さらにもうひとつ特筆すべきは、グルテンの関係で安定した生地作りが難しいとされる国産小麦粉のみ使っているところ。膨張剤などの添加物は不使用ですから、その製造にいかに技術や手間が必要になるかは想像に難くありません。
さて、割卵機で割った大量の卵たちは、生地作りのラインへと次々と送られていきます。卵と小麦粉、糖類を大きな容器に入れてミキシングすると、なめらかな生地があっという間にできあがり!
「要となる工程は焼成ラインでしょう。生地を流して焼き上げ、完成するまでに、いくつもの職人の技が必要なんです」
中でも特に難しいのが、泡切り=Bざらめを広げた四角い木枠に生地を流し入れ、オーブンで軽く加熱して上部に浮かせた気泡を一つひとつヘラでつぶしながら、表面を平らにする作業です。
「気泡の切り方ひとつで生地のなめらかさに大きな差が出ます。もちろん、焼き上げる温度や時間、火加減などが重要になるのは言うまでもありませんが」
焼き上がったカステラは一晩ねかせてしっとりと落ち着かせてから丁寧にカット。最後の包装ラインへと流れます。
短いサイクルで次々に淘汰されるお菓子が多い中、長い間変わらずに支持されている生協のカステラ。毎日のお茶請けにぴったりの価格もうれしい限りです。
コープ九州の生活情報誌クリム13年8月号より