湯の花小屋で採取される湯の花。粘土と温泉の成分で、小屋の中で霜柱のように育ちます。黄色い部分は鉄分。
なによりレトロな商品名が印象的ーーですが、「ヤングビーナス」は名前に勝るとも劣らないインパクトと実力を持つ入浴剤であることをご存知ですか? 多くの組合員に、これでなきゃダメ! と言わしめるほどの圧倒的な存在。その理由に、一般的な他の入浴剤とは明らかに異なる原料と製造法が挙げられます。
「温泉成分の湯の花エキス、重曹の一種・セスキ炭酸ナトリウム、火山性成分のホウ酸。3つの天然素材を合わせて撹拌するだけ、と言ってしまえば簡単ですが、これが相当、難しいことなんです」
そうおっしゃるのは、ヤングビーナス薬品工業鰍フ梅田信哉さん。ベースとなる湯の花は酸性で、そこにアルカリ性のセスキ炭酸ナトリウムを加えて化学反応を促すという少し複雑な話ですが…。
「鉄分やミネラルが豊富な湯の花は、そのまま使用すると風呂釜などを傷めてしまいます。そこで、湯の花の有効性を損なわずに家庭で手軽に使えるよう、他の2つの成分を加えることを考えました」
今年で創業51周年のヤングビーナス薬品工業梶B初代社長は当時、11年もの月日をかけて商品を完成させたそうです。
「別府で湯の花を銭湯に卸していた初代は、戦後の傷病兵が湯の花の温泉で傷を癒しているのを見て、なんとかこれを家で使えるようにと研究を重ねたそうです」
入浴剤は一般的に、原料を合わせて香りをつければ完成。ヤングビーナスは原料に熱を加えて混ぜて化学反応を起こし、その後、成分を安定させるために熟成が必要。完成までに3日はかかる職人技です。
別府の明礬温泉には、専用の湯の花を作る茅葺き屋根の小屋が並んでいます。近くの山から採取した粘土と、温泉ガスで生成するミネラルの塊・湯の花。その製法は江戸時代と全く同じだそうで、これにも驚きです。
家庭のお風呂を限りなく温泉に近づけるヤングビーナス。「肌触りがツルツルする」「入浴後のポカポカが長く続く」。一度使ってみると、このようなたくさんの声も、大いに納得できるものでした。
コープ九州の生活情報誌クリム13年11月号より