塩抜きして洗ったもずくを広げ、まずは第一段階の異物チェック。目についた大きな異物を取り除きます。
年間およそ1300万食売れる商品。と言っても、ピンとこないかもしれませんが、この数字の解釈として、製造元の東洋水産いわく「単品でここまで売れるのは、非常に珍しい」ことなのだとか。
栄養価が高く、ヘルシー。そんなもずくですが、家庭ではそのままポン酢で、沖縄では天ぷらでも…というのが、ほぼ一般的ではないでしょうか。
もずくだけに酸味が強いスープなのでは? と思われがちだそうですが、味わいはかつおだしのきいたお吸いもの風です。
そんなもずくスープ、製造現場で繰り広げられていたのは、一筋縄ではいかない前処理の光景でした。入念にくり返される徹底した異物除去です。東洋水産の担当者によると、 「沖縄から入荷した塩蔵もずくを、開封してから異物との闘いが始まります」
雑海藻、貝殻、小エビに小魚など、海中で育つだけに、もずくには異物がつきもの。それを完璧に除去するのが、商品作りの要なのです。
洗ったもずくを台の上に広げ、目についた異物をひとつひとつ手で除去。2〜3cmにカットしたら、再び、3段階にわたる異物除去へと突入します。
「従業員は、目の細かいあく取りとピンセットを両手に持ち、水につけたもずくに浮いたり絡んだりしている異物を、あく取りですくったりピンセットでつまんで除去するんです」
異物を見つけやすくするため、もずくを流す樋の底は黒と青に色分けされています。さらにその後、水切りしたもずくを白い板に広げ、手で感触を確かめながら最終チェック。この方法により、工場では今年度、10月までの時点で養殖網などの異物の申し出はゼロ。細かい知恵と努力が功を奏した結果です。
処理を終えたもずくは、かつおエキスや醤油で味つけしたスープに投入。みつば、ねぎ、ごま、ゆずなどとともに大きな釜で撹拌し、1個分ずつのキューブ型へ流しこみます。そして凍結後、冷凍したまま気圧を下げて乾燥させ、水分を蒸発させるフリーズドライの工程を経て完成です。
「フリーズドライ製法は、最小限の加熱なので、素材の味わいや栄養が損なわれにくいのが特長です」
熱湯をかけると、お椀の中でふんわり広がるもずく。独特のぬめりと、みつばやゆずのいい香り。しみじみとおいしさを感じるスープです。
コープ九州の生活情報誌クリム15年1月号より