口当たりがまろやかになるよう大きさを考慮した、フレーク状の氷。これをシロップと合わせて撹拌します。
フタを取り、スプーンですくってひと口。濃厚でありながらさっぱりとした練乳の甘さが広がり、シャクシャクした氷の食感で気分は一気に夏全開! キンと喉を通過するクールなさわやかさ。ほくっと淡白な小豆や、みかんやパインのフルーティな甘酸っぱさ。さぁ今年も、鹿児島名物「南国白くま」の旬がやってきました。
「今でこそ、多メーカーが手がける氷白熊ですが、実は50年ほど前に、当社が初めて工業的に生産を始めたんです」
製造元のセイカ食品は、ボンタンアメや兵六餅ですっかり全国区となった鹿児島市内の老舗メーカー。年季の入った工場の佇まいが印象的です。
さっそく向かったのは、大きなタンクが並んだ仕込み室。練乳や液糖などをミックスしたシロップを溶解タンクで混ぜ合わせます。製造室にある巨大冷凍庫の中には、大量のフレーク状の氷。従業員が長い棒を使って、まるで雪かきをしているかのように中の氷をかき出し、シロップとともにミキサーで撹拌。トロトロのシャーベット状になって出てきたものをカップに充填し、小豆とみかん、パインをトッピングするのですが…。
「3種類を見た目よくのせるために、すべて手作業で行っています。バランスを考えて素早くトッピングするのも、結構難しい作業なんですよ」
充填されたカップが次々と流れてくるラインの両側に並んだ従業員。受け持ちのトッピング具材を手に取り、めまぐるしく手を動かしています。
トッピングが完了したら、フタをして凍結トンネルフリーザーで凍らせてできあがり。レトロな波型カップもなかなか新鮮です。
高級感あふれるアイスクリームもいいけれど、昔ながらの素朴な甘さが懐かしい氷白熊はやはり、冷菓の王道と言えるのではないでしょうか。人口甘味料(スクラロース)を使用せず、練乳とシロップのみの自然な甘さ。大粒の小豆を使用するといった生協仕様も、うれしいところです。
ところで、誰もが知りたい氷白熊≠フ名前の由来。このネーミングはその昔、あるかき氷屋で練乳がけのかき氷を出した際、練乳の缶に貼られていた白熊のレッテルからついたものだとか。何ともかわいいお話です。そして最後に、セイカ食品からのメッセージ。
「冷凍庫から出したら、はやる気持ちをおさえて、しばらくそのまま置いておきましょう。ほどよく溶けたくらいでいただくのがおいしいですよ」
コープ九州の生活情報誌クリム15年7月号より